2012年9月9日日曜日

イタリア南部の旅6:ローマ、バチカン

2012年夏のイタリア南部の旅、現地6日目、 この日は、一日ローマ市内を歩き回り、旅の仕上げにバチカンを見学しました。

写真は、パラティーノの丘にある皇帝宮殿ドムス・アウグスターナ(Domus Augustana)の遺跡です。

朝は昨日入れなかったフォロ・ロマーノとパラティーノの丘を目指します。ホテルを出るのが微妙に遅くなってしまい、また沢山歩くことが予想されたので、今回は地下鉄を使うことにします。まずテルミニ駅で一日乗車券を購入。
はじめてのローマの地下鉄です。最近は東京メトロも節電で照明を落としているので、それに慣れてしまったせいか、それほど暗い印象はありません。しっかり自動改札もあって、ホームは怖い印象はありませんでした。



ただし、車内では小学校低学年位の小さな女の子の集団がいて、近くの席のおじいさんをからかって、そのおじいさんが追い払ったりしていました。身なりは普通で、とてもスリをはたらく子供には見えなかったのですが、そのおじいさんは、周りにカバンに注意をするような身振りをしていたので、噂に聞く子供のスリ団というやつだったのかもしれません。もちろん服装や持ち物だけからは判断できませんが、イタリア人の一般家庭のごく普通の子供といった感じ。もしこの子たちがスリ団なのであれば、貧困の問題というよりは、もはや教育の問題なのではないかと思います。いずれにしても怖い、という雰囲気ではなく、多少気をつけていればよいという感じでした。

コロッセオの駅から歩いて、フォロ・ロマーノ&パラティーノの丘の入り口に向います。10時ころ到着しましたが、もっと早くから開いているようなので、もっと早起きすれば良かった・・・。
まずはパラティーノの丘から見学します。こちらは水道橋の後。






こちらはスタディオ(stadio)、競技場のような感じの中庭です。












そして、冒頭の写真もそうですが、皇帝宮殿ドムス・アウグスターナ(Domus Augustana)が隣接しています。多くは崩れ、レンガ造りの廃墟が並びますが、一部が花畑となっていて、手入れされていました(遺跡をどこまでいじっていいのか議論が分かれるところでしょうが)。風景としては、廃墟の中の花壇もなかなかいい感じです。




 パラティーノの丘には、小さな博物館があって、出土したものが飾られていました。
 ローマ時代の皇帝や有名人の像(出土品)が一通り並んでいるのですが、
ローマが巨大化する前の遺跡についての説明もありました。紀元前800年ころはこんな感じ。人々が掘っ立て小屋に定住し始めた頃のようです。日本で言えば、縄文時代後期、建物のレベルはそれほど変わらないように見えてすこしホッとしました(笑)








ここからたっての数百年、どうやって、あんな立派な水道橋や建造物を建てる文明へと変貌を遂げていったのでしょうか(ギリシャの影響も?)。カエサルの時代から五賢帝の時代(紀元前後)、日本はまだまだ弥生時代、このころ建築物ではだいぶ差をつけられてしまいました(笑)。

博物館とは別の建物ですが、パラティーノの丘には、こんな建物もあって、なかに入ることができました。壁画などを見ることができましたが、修復工事中のようでした。こちらもローマにありがちな、遺跡流用系の建物でしょうか。

















パラティーノの丘からフォロ・ロマーノを眺めた様子。見晴らしがいい丘です。この辺りは、ファルネジアーニ庭園といって中世につくられた世界初の植物園になっています。そのありがたみがわからずに写真を撮るのを忘れてしまいました。この辺りは、とりあえず農薬(除草剤)?の臭いがきつかったので、そうそうに退散しました。






さて、いよいおフォロ・ロマーノと思ったのですが、どうもパラティーノの丘で見落としたところがあるようです。一旦、奥を目指しました。丘の上からバチカンなどを眺めた後、何やら行列があるので並んで見ることに。

 Casa di Augusto、つまりアウグストゥスの邸宅の跡地のようです。一度に入れる人の数が限られているらしく、かなり待ちました。列は、左の写真のような遺跡の発掘現場という感じのところにあって、保護の屋根がついていたので日差しは防げていたので、それほどつらくはありませんでした。
いよいよアウグストゥスの邸宅に入ります。十数人単位で区切っていれていました。まずは外観から。












一見質素な邸宅ですが、内部にはこんな感じで壁画が残っていました。一見の価値有りです。



















 いよいよ、フォロ・ロマーノへ、と言いたいところですが、パラティーノの丘周辺にはいろいろ地下道などもあって目を楽しませてくれます。ウロウロしながら、かなりの時間を費やしていました。
こんな具合に、一部にレリーフが残っていました。後に公園施設として作られた地下道かと思ったら、どうやらこれもローマ時代の遺跡のようです。


















丘を下って、今度こそフォロ・ロマーノを目指しました。丘の間の谷あいのような地形にあります。こちらは「ティトゥスの凱旋門」です。皇帝ティトゥス(在位:79年 - 81年)を記念して建てられ、コロッセオに近い側にあります。



















一つ思ったのは、ローマ遺跡の探訪は夏には向かないのではないかということ(笑)。炎天下で、喉は渇き、園内は売店のようなものは一切ありませんでした。代わりに、水飲み場があり、いたるところにチョロチョロと水が流れていました。ローマ時代を模しているのか、当時の施設を流用しているのかはちょっと見ただけではわかりませんでした(トレヴィの泉は古代ローマ水道を改修して使用)。「海外で生水は飲むな!」と日本では口すっぱく言われていますが、マップには「for drinking」と書かれ、多くの人がペットボトルに入れたりしながら飲んでいました。「熱中症になるくらいなら腹を壊したほうがマシ(笑)」という具合に、恐る恐る試してみましたが、とても冷たくおいしい水でした。もちろん、その後、腹をこわすこともありませんでした


前日、その大きさに驚いた マッズェンツィオ聖堂です(312年完成)。これでも建物の一部が残った状態で、本当はもっともっと大きかったようです。古代ローマ時代の末期には巨大建造物が多く建てられたようです。











この辺りの様子:

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右端に見えているのがティトゥスの凱旋門、右上にマッズェンツィオ聖堂があります。元老院議事堂などフォロ・ロマーノの中心は画面の左です。


ヴェスタの神殿の跡を見ながら、さらに窪地を進んでいくと、セヴェルスの凱旋門や、ローマ時代の政治の中心地、元老院議事堂(クーリア・ユリア)などが見えてきます。




 フォロ・ロマーノの様子です。想像力をたくましくする必要がありますが、あのローマ帝国の中心です。
こちらが元老院議事堂(クーリア・ユリア)です。中世に教会に転用されていたものを1930年台に修復したものらしいです。古代ローマの威光を強調していたムッソリーニ時代の修復なので、どこまで忠実に再現したのかはわかりませんが、なんだか地味な建物なので、意外と忠実かもしれません(わからない部分はあえて作らなかったのかも)。










 ローマ時代には、元老院(Senatus)の会議が開かれ、国政について議論が重ねられていました。帝政時代は、「諮問機関」的な役割にはなっていたものの、皇帝就任の承認など重大な役割を担っていました。ローマの貴族や有力者の代表者会議で、古代ローマの自称「Senatus Populusque Romanus (SPQR)」(「元老院とローマの人民」)という言葉からもわかるように、(帝政下では名目上のものになりつつあっても)ローマ帝国の最高意思決定機関でした。実は、現在のイタリア、スペイン、フランスそしてアメリカなど多くの国の議会・上院の正式名は、例えば「Il Senato della Repubblica Italiana」(イタリア共和国元老院)といった具合に、「Senatus」(元老院)由来した語が使われています。




今回は、古代からのガラス展が開かれていました。こんな魚のモチーフや、












古代のガラス製品などが展示されていました。














フォロ・ロマーノの様子:

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左上にあるのがセヴェルスの凱旋門、そしてその右隣の地味な建物が元老院議事堂です。

すでにお昼を過ぎていましたが、とりあえずパンテオンを目指すことにします。歩いて向いますが、ちょうどパンテオンの裏手あたりで、まずはジェラートを食べることに。

 パンテオンの入り口の広場周辺は、かなりツーリスティックな雰囲気でしたが、裏手の方はそうでもなく、静かにジェラートを楽しむことができました。少々高めでしたが、フルーツたっぷりな感じでおいしかったです。







こちらパンテオンの正面です。西暦25年にアグリッパによって建てられた初代の建物は火事で消失してしまったため、118年から128年に掛けて、皇帝ハドリアヌスによって再建されたものが現在の建物とのことです。教会に転用されたおかげもあって、古代ローマの中では数少ないほぼ原型を保っている建物らしいです。


 後ろから見た様子、正面は神殿風ですが、本体はほぼ円形の建築物です。

 天井はこんな感じ。幾何学的な石造りで、天井からは採光があります。妙に近代的で、とても2000年近く前の建物にはみえません。天井部分はほぼ原型らしく、当時の技術に驚かされます。なお、こういった建物の場合、「皇帝◯◯◯が建てさせた」といった方がいいのかもしれませんが、皇帝ハドリアヌスの場合、優れた設計者であったとも言われ、パンテオンは、まさに「ハドリアヌスが建てた」代表作と言われています。
訪れた際には、無料のコンサートが開かれていました。内部はかなり混雑していました。ご覧のとおり、教会に改装されています。












時間もおしているので、お昼は軽くすまそうかとも思ったのですが、パンテオンから歩いて、大通りに抜けたところのバルで、セットメニューを「軽く」食べることにしました。


こちらがセットメニューがこちら、

トマトのブルスケッタ
ラザニア
そしてもう一つのセットが、こちら、

ミックスサラダ

ピザ(生地はローマ風)












いずれのセットもコーヒー(エスプレッソ)がついて、8.9ユーロ(約900円)でした。食事の方は至って普通なのですが、さすがにバル、エスプレッソの方は泡の層が厚く、見事な出来栄えでした(写真は撮り忘れました。クイっと飲みたいですからね)。他にもいろいろ選べました。

結局、ゆっくりと昼食をとった後に、バスに乗って、サンタンジェロ城(ハドリアヌス霊廟跡)を目指しました(写真は後で正面を回り込んだ時に撮影)。パンテオンから歩くか迷ったのですが、一日乗車券を持っていたこともあってバスに乗車、といっても、裏手から迷いながらまわっていったので、そのまま歩いていった方がはやかったかも。ちなみに橋自体もローマ時代のものらしいです(彫刻等はキリスト教のものに置き換えられていますが)。





 裏手には水道橋がつながっています。教皇領時代にはバチカンとつながって、城塞化していたようです。なんで裏手の写真があるかといえば、バス停から歩いて周り、城塞の周りを一周まわってしまったためです(「サンタンジェロ城公園入口」に入ってしまったため)。
入り口で水を補給(これもローマ水道?)し、 内部に入ります。しばらくはこんな地下道で、涼しかったです。本来、ハドリアヌス(と皇帝一族)の霊廟として建てられたローマの遺跡部分です。

 こちらは城塞に改造されてしまう前のハドリアヌス霊廟の復元模型。上にはハドリアヌスの像がのっていました。デザイン的にはアウグストゥスの霊廟にも通ずるものがあります。
 通路を抜けて上がっていくと、城塞部分に到着します。内部にはちょっとした広場もあります。建物部分は、キリスト教関係の資料館になっていました。
 通路もこんな風に飾りがあります。
 さらに屋上に上がると、ローマ市内の絶景を見通すことができます。こちらはバチカン方面を見た様子。天気も良かったのできれいでした。
夏の間、ライトアップしていて、夜も開館しているらしいです。そして、コンサートも開かれるようです。前日に行ってみたいような気もしていたのですが、夜出歩くのは微妙かと思い、断念していました。手前は中世の投石機だと思います。






すでに17時をまわっていましたが、いよいよバチカンを目指します。サンタンジェロ城からは歩いてすぐです。

サンタンジェロ城とバチカン周辺:

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右にあるのが、テベレ川とサンタンジェロ城(星状)、そして左側がバチカン市国です。鍵穴状のサンピエトロ広場とその右に巨大なサン・ピエトロ大聖堂があります。


サンタンジェロ城付近から見たバチカンの様子です。
いよいよバチカン市国入国。世界最小の主権国家でありながら、その国家元首、ローマ法王は、世界のカトリック教会の代表で、強い存在感があります。イタリアとの境には、特にゲートはありませんが、サン・ピエトロ大聖堂の手前に、ゲートがあって、空港のような荷物チェックがありました。米国スミソニアン博物館も同様とはいえ、サンマリノ共和国の時よりは、国境を越えた感があります。





サン・ピエトロ大聖堂の内部の様子、カトリックの総本山ということもあって、荘厳かつ壮麗という言葉が似合います。訪れたときは礼拝が行われていて、祭壇に近づくことができませんでしたが、後にだいぶ自由に見ることができました。


天井も豪華です。バチカン博物館は時間的にパスしましたが、宝物殿は時間ギリギリに入って見学できました。歴代のローマ法王関連の遺品や記念品が展示されていました(撮影NGなので写真はなし)。

内部には美術的な価値が高いものも多くあります。こちらはミケランジェロ作のピエタ像。


















夕暮れのサン・ピエトロ大聖堂、



 そして、サン・ピエトロ広場の様子です。イタリアでは、ありがちですが、一部が修復工事中です。歴史的建造物の維持管理は大変です。
 バチカン市国の郵便局もありました。なぜか自動車。









 バチカン市国を出た後は、水道橋をくぐり、バチカンとの境界にそって歩いて行き、リソルジメント広場に向いました。こちらバチカンとサンタンジェロ城を結ぶ水道橋(かつ城壁)です。右側には湧き水(水道)があって、多くの人が喉を潤していました。
リソルジメント広場の様子です。ここからもトラムが発着していました。普通にバスで帰るのも芸がないので、トラムを乗り継いで、ポポロ広場に向いました。










ローマ最終日の夕食は、ポポロ広場周辺にすることにしました。辺りは暗くなりつつありますが、賑やかです。旅のはじめに訪れた時の印象と比べると、そうレストランがおおいわけではありませんでしたが、双子の教会のところを進んで、ちょっと行ったところにあるトラットリアに入りました(写真は帰る時のもの)。


 まず前菜にいただいたのは、サーモンのマリネ、リコッタソース添え。シンプルですが、大ぶりのサーモンがおいしく、リコッタのソースもよい感じでした。











ちなみに、ちょうど前菜を食べはじめようとした頃、軽く肩を触れた人がいて、普通にお店の人が(海外ではありがちな)「楽しんでいるかい?」みたいな具合に声をかけようとしているのかと思った次の瞬間、後ろで大音響がして人が倒れました。声をかけようとしたのではなく、よろけかかって、肩に触れ、そして気を失ってしまったようです。支払いを済まして、店をでようとしていた家族(おそらく米国人)のうちの一人、一見、元気そうだったお爺さんでした(救急隊が来た後に70歳代と話していたのですが、そう見えないほど若そうに見える方でした)。救急の手助けを何かしないと!と思った瞬間、店のスタッフが全員で飛び出してきて、すぐに救急キットやら水やらを手早く持ってきていました。気を失ったときは、吐いたものが喉につまらないような姿勢で寝かさないといけないのですが、お店の人が一瞬でその姿勢にし、意識を取り戻した後は、座らせて、声をかけながらお水を飲ませていました。手際の良さに脱帽です。しかも、すぐに通行人2人が寄ってきて、瞳孔のチェックやら、血圧のチェックやらをはじめ、何やら話しかけはじめていました。どうやらお医者さんだったようです。そうこうしているうちに救急隊がやってきて、無事に運ばれて行きました。すでに元気そうだったので、大丈夫そうです。しかし、救急搬送の際、クレジットカードを確認されていたのがカルチャーショック、やっぱり海外旅行の際には、万が一のために旅行保険は入っておいたほうがよさそうです。

この一件があったので、この間、お客は入らず、お店はガラガラとなってしまったのですが、救急隊を送り出した後、オーナーと思しき女性は実に満足そうでした。

そして、プリモピアットには、魚介(海老)のカルボナーラ、













セカンドピアットには、サルティンボッカ(牛肉の薄切り肉+生ハム)、













そして付け合せには焼き野菜のグリルをいただきました。













そして、お酒は、カラフェ(500ml)の白ワインを少々いただきました。
辺りはすっかり暗くなり、ポポロ広場は、上野やアメ横を思わせるようなオモチャ(パタパタ人形とか光るスティック、ここではさらに飛ばしていましたが)を売る人がウロウロしていました。でも、上野と一緒で、別に普通にしていれば、大丈夫。いらなければ「No grazie(いいえ、結構です)」、ポポロ広場も怖い雰囲気ではありませんでした。帰りは地下鉄代行(MA5)バスでテルミニ駅まで行き、そこからホテルまで歩きました。

 翌日はホテルで朝食を食べたらすぐに出発です。テルミニ駅(下・左写真)からレオナルド・エクスプレス(下・右写真、空港駅にて)に乗り、空港へはかなり早く着きました。今回は、しっかり自動販売機で買ったので一人14ユーロでした(笑)。


空港で多少のお土産(搭乗直前にローマ遺跡のガイドブックを買いました・・・)を買い、成田行きの飛行機に搭乗しました。ゲートのところで空港地上職員までが「また来てね!」(カタコトの日本語で)と一人ひとりに声をかけている所が印象的でした。










機内での食事は次の通り、帰りは「イタリアン」を選びました。やっぱり海外の航空会社の場合は、和食以外を選んだ方が無難です。特に生ハム・サラミ類は普通においしいです。


帰りの飛行も順調で、古代ローマと日本を往復する温泉ギャグ漫画(映画)を見たりしているうちに、無事に成田に到着しました。予定より30分以上早く、朝6時ちょいすぎには着陸、朝の成田空港に一番乗り!といった感じです。金曜日だったので、そのまま職場に向い、何とか1日頑張り、お陰で夏休み3日+有給2日ですみました。飛行機の遅れも考えて午前は有給を出しておいたのだけど、ほぼ定時でした(笑)。今回の旅行は特にトラブルもなく、夏のイタリアを大いに楽しむことができました。



Posted by Picasa

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